大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)1079号 判決

訴外北日本油脂工業株式会社が昭和二十五年六月十日控訴人に対しなした別紙(原判決添附)目録記載の動産の譲渡行為を取り消す。

控訴人は被控訴人に対し金四百七万五千二百五十一円二十銭並びに内金三百四十七万五千二百五十一円二十銭に対しては昭和二十七年二月一日から、内金六十万円に対しては昭和二十八年九月三十日から、それぞれ支払ずみまで年五分に相当する金員を支払え。

被控訴人のその余の請求を棄却する。

訴訟費用は第一、二審共全部控訴人の負担とする。

二、事  実

控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人の請求(当審において拡張したる部分を含む。)を棄却する。訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求め、なお請求を拡張して、原判決認容の金三百四十七万五千二百五十一円二十銭に対しては昭和二十七年二月一日から年六分に相当する金員の支払を求めるほか、さらに金六十万円並びにこれに対する昭和二十八年九月三十日から支払ずみまで年五分に相当する金員の支払を求める旨及び担保提供による仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出、認否、援用は、次のとおり附加するほか、すべて原判決の事実摘示(但し原判決添附目録記載の不動産に対する抵当権設定行為の取消並びにその登記の抹消登記手続を求める訴は当審において適法に訴の取下がなされたので、右に関する摘示部分を除く。)のとおりであるので、ここにこれを引用する。

第一被控訴人の主張

(一)  本件譲渡行為のなされた昭和二十五年六月十日当時における債務者北日本油脂工業株式会社の資産は、右譲渡行為の目的である原判決添附目録記載の動産及び同日債務者会社が控訴人に対する金三百七十三万四千九百九十七円二十銭の売掛代金債務の担保として抵当権を設定した原判決添附目録記載の不動産を除いて他にさしたるものなく、被控訴人は到底その有する債権の弁済を受けることができない状態にあつた。

(二)  控訴人は、昭和二十六年八月末頃本件詐害行為の目的たる動産を代金六十万円で他に売却処分しその売得金を控訴人の財産に組み入れた。これがため、被控訴人はさらに転得者に追求して本件動産の回復を求めることができなくなつたので右回復に代え価格の賠償を求めることとし、当審において請求を拡張して控訴人に対しさらに本件動産の価格金六十万円並びにこれに対する右請求を記載した訂正申立書送達の翌日である昭和二十八年九月三十日から支払ずみまで年五分に相当する遅延損害金の支払を求める。

(三)  控訴人は公団であつて商人でないけれども、そのなす油糧の原料及び製品の売買はいずれも一定の利潤を加算して営業と同一になされておるものであり、被控訴人主張の協定も右取引に附随して控訴人、北日本油脂工業株式会社、被控訴人間になされた契約であるから、これが不履行による損害賠償の請求についても、その遅延損害金は当然商法所定の年六分の割合によるを相当とすべく、よつて原審においては右遅延損害金を年五分の割合により請求したるも、当審において請求を拡張して年六分の割合によることとし、控訴人に対し金三百四十七万五千二百五十一円二十銭並びにこれに対する昭和二十七年二月一日から支払ずみまで年六分に相当する遅延損害金の支払を求める。

(四)  控訴人が昭和二十六年三月三十日政令第六十号油糧砂糖配給公団解散令に基き同年四月一日解散し、既に清算結了登記を経由したことは認める。しかしながら現実においてまだ清算を結了していないのであるから、控訴人は、右清算終了登記にかかわらずなお存続しているものというべく、たとい残余財産を既に国庫に引き渡していたとしても、控訴人はこれを理由として本件支払義務を拒否することはできない。

第二控訴人の答弁

(一)  控訴人が昭和二十六年八月末頃本件譲渡行為の目的である原判決添附目録記載の動産を代金六十万円で他に売却処分しその売得金を控訴人の財産に組み入れたことは認める。

(二)  控訴人は、昭和二十六年三月三十日政令第六十号油糧砂糖配給公団解散令に基き同年四月一日解散し、既に清算を結了しその旨の登記を了した。

第三証拠

<省略>

三、理  由

控訴人が昭和二十六年三月三十日政令第六十号油糧砂糖配給公団解散令に基き同年四月一日解散し既に清算結了登記を了したことは当事者間に争ないところであるけれども、現実においてまだ清算が結了していないことは、現に本訴が係属していることによつても明らかであるので、控訴人は右登記にかかわらずなお存続しているものと認めるを相当とすべく、控訴人が既に残余財産を国庫に引き渡していたとしても、右事実は毫も控訴人の債務支払義務に影響を及ぼすものでないので、控訴人はこれを理由として債務の支払を拒否することができないものといわなければならない。よつてこの前提の下に被控訴人の本訴請求の当否を判断する。

(一)  被控訴人の詐害行為の取消並びにこれに基く回復の請求について。

債務者北日本油脂工業株式会社が昭和二十五年六月十日控訴人に対しなした別紙(原判決添附)目録記載の動産の譲渡行為が民法第四百二十四条にいわゆる詐害行為であつて、同条に基く被控訴人の取消請求が正当として認容すべきものであることは、原判決の詳細説示するとおりであつて、当審証人斎藤太蔵、杉本重義の証言によるも右認定を左右することができないので、ここに原判決の右理由の記載を引用する。(但し原判決九枚目裏十一行目「杉本重義」とあるは「杉本重義」の誤記である。)そして控訴人が昭和二十六年八月末頃右詐害行為の目的たる動産を代金六十万円で他に売却処分しその売得金を控訴人の財産に組み入れたことは控訴人の認めるところであつて、かかる事情の下にあつては、被控訴人は転得者に追求して本件動産の回復をはかることはできないものと認めるのが相当であるので、被控訴人は受益者たる控訴人に対し右動産の回復に代えその価格の賠償を求めることができるものというべく、その価格は反証のない限り右代金六十万円に相当する額と認めるのが相当である。果して然らば、控訴人は被控訴人に対し金六十万円並びにこれに対する右請求を記載した訂正申立書送達の翌日であること当裁判所に顕著なる昭和二十八年九月三十日から支払ずみまで年五分に相当する金員を支払うべき義務あり、被控訴人は当審において請求を拡張して右金額の支払を求めたものであるけれども、固より請求の基礎に変更なく被控訴人においても異議をのべないのであるから、右請求の拡張は許すべきであり、従つて右拡張にかかる請求は正当として認容すべきである。

(二)  債務不履行を原因とする被控訴人の損害賠償の請求について

昭和二十四年十一月十一日控訴人と北日本油脂工業株式会社及び被控訴人との間に被控訴人主張の合意(原判決事実摘示第一(四)の合意)が成立したこと、被控訴人は同会社に対し控訴人が同会社に支払うべき精油代金を裏付としていわゆる認証手形制度により融資をなしたところ、同年十一月頃認証手形制度が廃止されたので、これに対応するものとして右合意がなされたのであつて、従つて右合意は控訴人に対する同会社並びに被控訴人の単純なる届出と目すべきものでなく、三者間の契約として控訴人もこれに拘束さるべきものであり、またその目的趣旨よりして控訴人が同会社に支払うべき精油代金は金額被控訴銀行古町支店の同会社口座に振り込むべく控訴人の同会社に対する売掛代金その他の債権と相殺しない趣旨をも含んでいるものと認めるを相当とすること、しかるに控訴人は右約に反し昭和二十五年三月一日米糠工業油代金六十四万八千六百十四円四十一銭、米糠蝋油代金二十五万五千九十八円十八銭、以上二口合計金九十万三千七百十二円六十六銭を直接右会社に支払い、また同年三月二十七日米糠工業油代金百八十九万三千四百三十一円二十七銭、同蝋油代金六十七万八千百七円二十七銭、以上二口合計金二百五十七万千五百三十八円五十四銭につき当時右会社に対して有していた売掛代金債権二百五十七万千五百三十八円五十四銭を以て対当額において相殺をなしたことは、すべて原判決の理由において説明するとおりであつて、これがため被控訴人は右控訴人が直接支払いまたは相殺した金額合計三百四十七万五千二百五十一円二十銭に相当する融資の回収を確実になしえたにかかわらずその機会を失つたのみか、右会社は当時右融資を弁済するに足る資力をもつていなかつたことは、前示(一)の請求について認定した同会社の資産状況によりこれをうかがいしることができるので、右金額に相当する融資は回収不能となつたものと認めるを相当とすべく、従つて右金額は控訴人の右債務不履行により被控訴人の被つた損害ということができ控訴人は被控訴人に対しこれが賠償義務あることは当然であるので、右旨を補足しかつ「当審証人斎藤太蔵、杉本重義の証言によつては右認定を覆えすことができない。」と附加するほか原判決の右理由の記載を引用する。(但し原判決八枚目裏二行目に「被告会社」とあるは「訴外会社」の誤記である。)然らば、控訴人は被控訴人に対し金三百四十七万五千二百五十一円二十銭並びにこれに対する右部分の請求の拡張申立書送達の翌日であること当裁判所に顕著なる昭和二十七年二月一日から支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金を支払うべき義務がある。

被控訴人は、右遅延損害金は商法所定の年六分の割合によるべきであると主張し当審において請求の拡張をしておるけれども、控訴人は、昭和二十二年法律第二百三号に基き設置せられた公団であつて、その目的とするところは油糧(後に油糧及び砂糖となる。)の配給統制にあり、その実施方法として油糧またはその原料の買入または販売がなされるとしても、固より営利を目的とするものでなく、また常に利潤を含んでいるものということもできず、従つてこれを目して営業的商行為であるということは妥当でなく、その商人でないことは、公団が政府の一部局であり純然たる国家機関であることに徴し説明をまたないところであるので、本件遅延損害金については商法所定の法定利率によるべきでなく、従つて被控訴人の当審において右請求を拡張したる部分は理由なしとして排斥する。

以上の理由により被控訴人の本訴請求は右の限度において認容しその余は理由なしとして棄却すべく、控訴人の控訴は理由がないのであるが、ここになすべき判決は原判決と符合しないので右のとおり変更すべきものとし、仮執行の宣言は控訴人が政府の一部局である等の理由によりこれを付するを相当としないので右申立を却下することとし、よつて民事訴訟法第九十六条第八十九条第九十二条を適用して主文のとおり判決した。

(裁判官 大江保直 草間英一 猪俣幸一)

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